Short stories-スクアーロ×ディーノ-

お題ー10代の二人+着物ー



「俺、キンシローみたいにかっこよくなりたい」
耳慣れない名前がディーノの口から発せられ、スクアーロが重い瞼を上げたのはその昼下がりのこと。

季節は春から夏へ向かい、もう間もなくこの屋上で昼寝をするには暑くなるという日だった。
いつも通りさんざん(ディーノだけが)散らかして昼食をとり、スクアーロは昼寝、ディーノは食後に甘ったるいジュースを飲んでいた。
(ちなみに大量に食べ物を消費するくせにディーノが一向に太りもしないのは、あの家庭教師のシゴキもさることながら、これらの食べ物がほとんど本人の口に入っていないからではないか―食べこぼすせいで―とスクアーロは思っている)
「はぁ?誰だぁ、それ」
ディーノの口から“カッコいい”として出たのが自分の名前以外だったことをひっそりと不満に思いながら、興味なさそうな相槌を返すスクアーロに、ディーノは不満げな声をあげた。
「スク、またこないだの映画鑑賞のクラス寝てただろ!ジャッポーネマフィアのビデオ見たじゃねぇか」
「う”ぉ、見た見た、ゴクツマかぁ?」
奇跡的に記憶の片隅にあったその遠い異国の映画のタイトルを面倒くさそうに答える。

どうやらディーノはそのゴクツマの着るジャッポーネの民族衣装ーキモノ―をえらく気に入ったらしく、他にも色々ビデオを取り寄せて見たらしい。
その中に、キンシローが主人公の“トオヤマノキンサン”なるドラマがあったという。
ディーノの話があちこち飛躍するものだから、スクアーロはここまで聞き出すのに相当骨が折れた。
そこから更に嬉々として物語のあらすじを話すのを頭の中で要約する。
つまり今で言う裁判官であるキンシローは、普段はフラフラと街をブラつく遊び人なのだが、シマで起こった事件(主に悪の権力者に善良な町民が理不尽な目に合わされている)をその場を収め、尚且つ後日法廷で裁くことになる。
往生際の悪い悪役が証人を出せという、その際に威勢良く啖呵を切り、その肩から腕にある見事なタトゥーを見せるのだと言う。(これはシマでの乱闘の時も見せている)
そして悪役は観念してメデタシメデタシという、勧善懲悪な昔話。
そのタトゥーはサクラフブキ。
ジャッポーネの春の象徴の花が舞い散る様子を表しているらしい。
スクアーロとしては、自分たちのようなマフィアに身を置く人間と、法の番人では立場はまるで逆。むしろキンシローに成敗される側の立場だろう、とツッコみたくなるものの、
そういった根本的な部分は目を瞑らざるを得ない。
いちいちディーノの話に突っ込んでいたらいつまでも前に進まないからだ。

ある日以来、あんなにだらしなく来ていた制服のボタンをきっちり留めるようになったディーノ。
その姿を横目でチラリと見る。
シマの人間の安全を守り、ここ一番で頼りになる姿。しかも腕に見事なタトゥーが入っている、となると、心に思うものがあるのだろう。
そうスクアーロは理解して、
「じゃあ今度見せてみやがれぇ。ジャッポーネの昔のドラマは剣で戦うんだろぉ?」
俺の方が強ぇがなぁ、と言い、今度こそ本当に寝る体勢をとった。
「強くなったら、そしたらキンシローみたいに堂々と見せられるかなぁ・・・」
ぎゅ
自らに刻まれたそのシャツでは隠しきれない模様を眺め、そして袖口を掴んでディーノがぽつりと零した言葉は聞かぬフリで。


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