Short stories-ディーノお誕生日

call



眠気は誤魔化しようがなく、欠伸を噛み殺すのもとうの昔に放棄した。
デスクに置きっぱなしのエスプレッソは冷え切って、ただの苦いだけの水でしかない。
それでも眠気ざましになるかと口に含んでみたが、単に俺の眉を顰めさせただけだった.。

「あーーもうっ」
盛大に伸びをして、鬱憤を吐き出すべく声に出してみた。
その時、これもまたデスクに放りっぱなしだった携帯電話が振動する。
それに驚いてビクリとした拍子に、だらしなく腰掛けていた椅子から転がり落ちそうになる。
それはなんとか免れたものの、ちら、と覗いたディスプレイが、それが意外な人物からの着信であることを知らせていて、途端に眠気は吹っ飛んだ。
「もっ、もしも…うわっ」
慌てて通話ボタンを押そうとしたせいでウッカリ電話そのものを取り落とした。
ガチャガチャという騒音を聞かされたであろう相手は、俺の慌てっぷりなど予想済みだっとでもいうのか、さして驚いた様子も、怒っている様子もない。
…呆れてはいるようだが。

「よう、珍しいな」
気を取り直して話す。
そう、俺から電話することはあっても、逆にかかってくることなど滅多にない。
故に、先程までの疲労感などなかったかのように心がウキウキとするのを隠せず、声が弾んでしまう。
それなのにコイツときたら、自分からかけてきたクセに進んで喋ることはなく、俺ばかりが喋り、それに対して興味なさそうに相槌をうつだけ。
「なんだよ、自分からかけてきたクセに。なんか喋れよ」
文句のはずのセリフも、こんなに自分でも自覚するほど弾んでいては一向に抗議としての効果はない。
それに対して、別に用事があってかけた訳じゃないからもう寝る、とさらに愛想のない返事で返され、さすがにいじけて、さらに文句を言い募ろうと息を吸った時、
「…」
まるで電波が悪くなったのか、ひどくブツ切れて、そして酷く小さい声で何か言ったのが分かった。
「えっ、何ナニ?なんて?」
慌てて耳を電話に貼り付け聞き直したというのに、聞こえてきたのは本日イチバンの不機嫌な声でのオヤスミの一言と、そのすぐ後にブチッと強制的に通話を終了された、ツーツーという虚しい音。
一体なんだったんだ、と首を傾げ、そして若干の理不尽さを覚えて“通話終了”のディスプレイを眺めた。
途端に分かってしまった。
携帯のディスプレイの表示は、日付が変わって2月4日の0時過ぎ。

「ちくしょーめっ」
バフンとベッドにダイブして、電話を抱きしめてゴロゴロ転がった。顔がだらしなくにやけているのが分かる。
耐えきれずにリダイヤルボタンを押してしまった。
出てくれないかとも思ったが、奇跡的に繋がる。
不機嫌な声を出される前に、
「なあっ、もっかい言ってくれよ」
大サービスで言ってくれるか、それとも不機嫌にあしらわれるか。
それにしたって
照れ隠しなのが分かった今ではどちらであっても、最高のプレゼントに違いなかった。


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