私立!妄想学園

放課後編

「あー、もう!俺の邪魔をするな!」
例によって放課後。いつものように生徒会室。
夏休みが終わり、2学期初の会議後、残務処理をしていた弘樹がイライラとして言った。
斜め向かいに座る津森が、書き物をしている弘樹の髪をすいたり頬をなぞったりしてくるからだ。
くすぐったいし。
気が散るし。
なにより心拍数が上がるし。

「早く片付けて帰ろーぜー」
ネコの子にする様に喉もとを擽られ、ビクンと体を跳ねさせると、
パシンとその手を払いのけて、ぎゅ、と睨みつける。
「おーまーえーはー!」
「えー?やなのかよ〜」
叩いた手を掴んで、ちゅと甲に口付けられる。
「・・・っ!」
一気に頬が高潮し、津森に掴まれた手を取り返すと、
「やとかじゃなく!もー!は、恥ずかしいっつーか、気ぃ散るだろ!」

一人真っ赤になって狼狽える自分の様子を余裕の表情で眺めている津森が気に食わなくて、弘樹は立ち上がり、津森の首に手を伸ばす。
そしてネクタイを掴むと、いつもは結んでやるばっかりのネクタイを解いて引き抜く。
「?」
不思議そうな顔をしている津森の手をとり、その後ろに回り込むと両手をひとまとめにしてぐるとネクタイで縛った。

「ク、何のマネ?」
後ろ手に縛られても、津森は何だか楽しそうだ。
それはそれで気に入らないで、弘樹はむっつりとしたまま席に戻る。
「うるせーよ、ちょっとソレで大人しく待っとけ」
「いやー、上條にこんな趣味があるとはなー」
弘樹の言葉への返事は返さず、茶化す。
「し、趣味・・・!んなワケあるか!オマエが触ってくるからだろうが!」
「じゃぁ俺の課題はどーすりゃいいの」
「・・・俺が代筆してやるから寄越せ」
縛った手前、今更じゃぁ解きます、というのも癪で、津森の机の上に置かれた、殆ど白紙のノートを奪う。
「んじゃ英作文なんで書き留めてネ♪」
すらりすらりと歌うように発せられる音を文字にして書きとめる。

(くっそー、コイツにしろ秋彦にしろスラスラと・・・っ!)
順調にノートを埋め終わると、きゅるる、とかわいい音がした。
「腹減ったなー」
津森のお腹だったらしい。
「昼飯もっと食えよ。菓子パンとかじゃなくさ」
「そー、その菓子パンの残りがカバンの中あるからさー」
机の上に放り出されたカバンをあごで差しながら
「食わして♪」
爽やかに笑って見せた。
「んな!アホか、自分で食え!」
それでも律儀にカバンからパンを出してやりながら弘樹は言う。
「だって食えねぇもん。手ぇコレだしー」
弘樹の眉がぴくりとつり上がる。
そして、菓子パンの包みを開けて、くすくすと笑っている津森の口に
「知らねーよ!てめぇのせいだろうが!」
むぐ、とパンを押し込んだのだった。
「ふぃふぉいは〜(ひどいなー)」
それでも手を使わずにパンをくわえたまま、器用にむぐむぐと食べている津森をよそ目に見つつ、資料をまとめる。
「上條ジュースとって、ジュース」
どうにかパンを食べ終わった津森が次なる注文を出すので、無言で立ち上がりストローを差し出す。
「口移しじゃないんだ?」
チラと弘樹を見上げ、不満そうに一口飲み込んだ津森を睨み返し
「アホか」
一言で片付け、机の上の整理にかかった。
「じゃぁさー」
「もー!なんだよっ!」
そもそもは自分が縛ったからだ、ということを棚に上げてギロリと弘樹が睨む。

「キスしてー」
「なっ?!」
かぁぁ、とまたしても赤くなる自分を恨めしく思う。
いつだって津森は余裕で、いつだって自分ばかりがドキドキしているようで気に食わない。
「俺からできねぇじゃん?」
ほら、こうやって余裕ぶってにやりと笑って。

たまには津森も狼狽えたっていいんじゃないか?
そう思い、意を決して津森の正面に立つ。
飛び出しそうな心臓をごくりと飲み込み、必死で平静を装うと、身を屈めて顔を近づけて行く。
じぃ、と見つめられて心が折れそうになる。

「め、目ぇ閉じろよ・・・っ」

くす、と笑って津森が目を伏せる。
(コイツって、キレーな顔してるんだよな、憎たらしーけど)
そうして自分も目を伏せて、そっと唇を触れ合わせた。

次の瞬間。
ぐい、と抱き込まれて膝に抱え上げられる。
「んぅ・・・っ?!」
後頭部を引き寄せられ、深く求められる。
舌を絡めとられ、吸い上げられる。
ごく、と音を立てて津森が二人分の唾液を飲み下したところで、ようやっと解放される。
「っはぁ・・・、な、なんでだよっ」
膝に抱き上げられたまま、整わない息で弘樹が訳が分からないといった風に問う。
「ゆるゆるだっつーの。スグ解けるよ、あんなの」
「!!」
初めっから解けたのを、わざとそのままにして楽しんでたのだ。
「アホ津森!!ば、馬鹿にしやがってー!」
じたじたと膝の上で暴れてみるが、抱き込まれて脱出できないでいる弘樹を、
またしてもにこりと涼やかに笑って見返すと
「さ。じゃぁ今度はオマエね?」
津森の手によって、するりと弘樹のネクタイが解かれる。
「は?」

「人にしてもらって嬉しかったことは、同じことをしてあげましょうって習ったよな?」

弘樹のネクタイを手に取って、今度こそにやぁ、と笑ったのだった。


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