私立!妄想学園

食後のデザート編(序)

この家でお風呂を借りるのは二回目だが、やっぱり旅館の風呂のようだと津森は思っていた。
夕食を一緒にご馳走になって、泊る。
きっと恒例になっていきそうだな、と思ったのは前回来た時に津森用におろしてくれた歯ブラシが家族と同じスタンドに立てられていたから。
風呂上がりに用意されていたのも前回と同じ浴衣で。
その歯ブラシを見た時、猛烈に満ちるものを感じて髪を撫で回していたバスタオルで顔を拭う。

そうしているとノックと共に弘樹の母親が入って来た。
「津森くんやっぱり浴衣似合うわね!次までにあなた用のをしつらえておくから、今日はまだパパので我慢してね、ちょっと短いでしょうけど」
ニコニコと話かけてくれる母親に向かってペコリと頭を下げた。
「ホントはねえ、ウチで住んでくれて良いのよ。そっちの方が安心で・・・」
あまりに予想外の申し出にハッと顔を上げると弘樹の母はそのまま話を続ける。
「ほら、この間津森くん風邪引いたでしょう。あのときヒロちゃんがそちらに行ったけど、あの子ったら結局ろくに役に立たなかったと思うのよね」
「いえ、でも彼のお陰で良くなりましたから」
嘘ではない。したのは看病ではないかもしれないけれど。
もう一度母親にぺこりと頭を下げて風呂場を後にしたのだった。

部屋に戻ると丁度弘樹は宿題を終えた所のようで、津森の姿を見てかぁと顔を赤らめる。
「なに照れてんの」
「・・・っ、何でもねーよっ。風呂入ってくる!好きにしてていーから!」

部屋を後にしながら弘樹は心の中で母親に文句を言っていた。
(あのババァ〜!パジャマでいいじゃねぇか。なんでまた浴衣なんだ!?ぜってーあいつのシュミだ!)
だらしなく着た浴衣のあわせから自分より逞しい胸なんかが見えると勝手に体温が上がって自分の意思とは無関係に鼓動が早くなるというのに。
ぶん、と頭を振って津森の映像を頭から追いやり、ざぶ、と風呂につかる。
湯船でぼぅとしていると、津森の『後でしような〜』という声がよみがえったり、アノ時に恥ずかしくて顔を上げられずにずっと見てた肩から腕、胸なんかも再生されて、慌ててわしゃわしゃと髪を洗って気持ちを入れ替える。
仕上げに水をかぶってほてりを落ち着かせてから風呂から上がったのだった。

(平常心、平常心・・・・)
心の中で唱えながら部屋へ戻る。
なんだってこの無駄に広い家で、しかも空き部屋だってあるっていうのに、それも子供じゃあるまいし布団を並べて敷くのだ、あの母親は。
親にとっては自分はいつまでも小さい子供なのだなぁと思い、同時にいっそ津森がもう寝ていてくれたら良いとも思うのだが、時間が10時前ではそれもかなわないだろう。


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